3月28日5時40分。仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 7
男は、家族に今までの態度を謝った。会社の倒産の整理をして帰宅すると、妻は冷たいビールを差し出し、子供たちは父親を囲み1日の出来事を話すようになり、家庭は明るくなっていった。
倒産した会社の整理が終わった。 男は家族を養うための仕事を探していた。 パートに出ていた妻が帰宅した。 「お父さん、うちの会社でアルバイトで警備員を募集しているのよ」と告げた。 男は、かつてクッキー職人から中堅の会社を起こしたプライドを持っていた。 倒産させたとしても、プライドは消えていなかった。しかし、現実は仕事が見つからなかった。警備員になる覚悟をした。 妻の勤める会社は、地元では大手に入る会社だった。 妻の会社に採用された男は、仕事が丁寧だった。 会社の隅々をよく点検し、すれ違う人には優しい声で挨拶をした。良く気配りして働いた。 上司は、働きぶりを見ていた。推薦されて正社員となった。 正社員となってからも変わらず良く働いた。 他の警備員らにも評判が良かった。 1年経った。社長から警備員の長への辞令を受けた。
入社してまだ浅いが、誰もが認める働きぶりだった。部下となった仲間にも決して偉ぶらず、仕事を指示し良く働いた。また1年経った。仕事ぶりを見ていた社長から総務部への移動を告げられた。 総務部では、訪れる客への適切な応対と気配りが評判となった。 よく働いた。かつての会社で身についた姿だった。早く出社し、自ら先頭に立ち掃除をした。威張らなかった。男の働きぶりを見ていた取引先の会社の社長から声をかけられた。「我が社の営業部の部長として来てもらいたい」との打診であった。この会社は、今居る会社より規模は小さいが、製菓会社だった。 給料も良かった。過去の経験が生かせると判断し、転職した。男の過去に培かった経験が、生かされた。取引先拡大に向けて自ら陣頭に立ち働いた。 熱心で誠実な男の働きぶりで取り引き先を増やした。長となっても決して部下に威張らなかった。部下をかばった。部下は、部長の指示を的確に受け良く働いた。 会社の営業成績は上がった。男の実績が、認められた。夏の賞与は、倍になっていた。
仏陀は、言われた。「過去の失敗や辛い経験は、全て人生の宝である。 心がけ次第で運命は変わる。国についても同じである」