2025年4月9日夕方5時10分。
仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』企業シリーズ 31
役員たちは、社長の会社経費流用をどう追求するかについて会議を開いた。今まで社長に言えなかった不満が、一気に噴き出した。会議は、白熱し、議論が飛び交った。社長を役員が招集し、一つ一つ不明な点を追求しようということになった。
会議が開かれた。司会を務める役員は、「経理部より、社長の経費に不明な多額の出費があるとの報告を受け調査をしました。社長は、経費を何に使ったかを説明していただきたい。接待の領収書にしては、あまりにも多額な金を使っています。あり得ない金額なので、接待した人の名前を教えてほしい」と言った。社長は、元居た外国の会社の仲間を接待し、多大なる情報を得たので、礼として手土産をつけて渡した。これは会社の経営に役立っている」と説明した。役員たちは、「それにしても高額なので、何を送ったのか?」と問いただした。社長は、「一社の主が、自分の判断で接待に使った金にいちいち文句を言われる筋合いはない」と怒り出した。役員は、「その人に会って確かめたいので連絡をとってほしい」と言った。社長は、「その者は、帰国して日本にいない」と言った。
役員の司会者は、「社長は贈答品として軽視してますが、何の目的で、誰に、何を、いくらで買い、送ったのですか?」と質問した。社長は、「会社が、かつて世話になった人にお礼として金を包んだ」と言った。役員が、「その人に確認の連絡をしたい」と言うと、社長は、「外国人なので帰国してしまった」と答えた。いろいろと不透明な点を追求したが、どれも納得する回答は得られなかった。会議の途中、役員たちにお茶を出した社員がこの話を盗み聞きしていた。話を盗み聞きした社員は、仲間の社員にこの話をした。話を聞いた社員が、別の部署にゆき話したために「社長経費流用事件」としてあっという間に社内に広まった。社員たちは、怒った。「自分たちを規約で縛り、利益を上げることばかり言っている社長が、会社のお金を流用し、使途不明とは許せない」と言い合った。労働組合事務局は、会議を開いた。一致団結して社長に経費流用の説明を要求することに決まった。社長の経費流用の会議は連日開かれた。
社長は、強気でのらりくらりと話をかわした。労組の幹部も会社に詰め寄った。社内は、社長の不審な態度を噂した。連日、緊迫した空気で会議が開かれた。マスコミもこの情報を聞きつけた。社長は、出社して来なくなった。
不審に思った社員が、社長宅を訪問すると人影がなかった。近所の人に話を聞くと「夜、トランクを持って家族で出かけた」と答えた。社長は、外国へ行くとの情報が入り、直ちに会社は役員と社員多数を飛行場へ向かわせた。噂を嗅ぎつけたマスコミも同行した。飛行場へ行くと、社長は本国ではなく他国へ出発した後だった。会社は、騒然となった。役員会は、外国の専門調査会社に社長を探すように依頼した。
役員会は社長がいなくなったので、次期社長を役員の中から選出することに決めた。3人の立候補者が名乗り出た。役員会は、候補者に賄賂を出さないこととそれに違反した場合は、立候補者の資格を剥奪することを伝えた。3人は、それぞれ選挙公約を発表した。一人は売り上げを伸ばすことを、一人は福利厚生の充実と社員の生活向上を、もう一人は海外市場の拡大を言った。
候補者たちは、お互いの悪い処を指摘し、対立候補者が経営すれば会社は衰退すると言って足の引っ張り合いをした。投票が行われた。3人同点だった。