3月26日朝5時45分、仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』企業シリーズ 3
昨日の続きである。
ブランドの財布は、戻ってきた。 女は、バッグを処分してしまったことを後悔した。手元にバッグがないことで頭がいっぱいになっていった。
女が、仕事場に向かう途中の出来事だった。 街の高級リサイクルショップのウィンドウを見た。
「私のバッグが、…」心の中で叫んだ。
近寄ってみると買った時の2倍の値段で売っていた。 興奮した。 心は燃えたぎった。 仕事中も頭の中は、バッグのことが浮かんでは消え、消えては浮かんでいた。バッグを愚かにも処分してしまった自分を責めた。 2倍の値のついたバッグは、取り戻すことができなかった。 後悔の渦が、脳を占領した。
通勤の行き帰りにリサイクルショップの前を通り、バッグを眺めた。 ショ一ウィンドウにバッグがあることを確認しては安堵した。
だが、数日後リサイクルショップにバッグはなかった。女は、焦った。今まで幻の宝となったバッグが目の前にあることで安堵していたのだ。 目の前から見えなくなったことで、我に帰った。一生懸命作ってくれた職人のこと、財布を失って人を責めた日々、バッグを失った自分の愚かさ、後悔した日々を思い出した。 バッグが、目の前から消えて初めて気がついた。 心の縛りが、解れていった。 それからは、女はリサイクルショップの前を軽い足取りで通り抜けた。女は、バッグを届けてくれた人、財布を届けてくれた人の誠実な心に気がついたのだ。
仏陀は、言われた。 「これらが、人間社会の現実、今の世界情勢の現実である。 自国のみにとらわれて先が見えず、とことん失って初めて気がつく姿である」