2025年4月3日夕方5時、仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 19
元社長の男は、学生時代の友人に感謝した。「あの男がいなかったら今日の自分はなかった。不幸は、幸せを呼ぶ宝だった」と過去を振り返り感慨深げに言った。元社長は、幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、1人の婦人が訪ねてきた。社員の母親だった。女は、「私は、社長さんにお礼を申し上げに参りました。息子は、会社に入社する前は親に反抗して、私どもは、恐ろしくて息子に話しかけることさえ出来ませんでした。 何年も腫れ物に触るように接する日々でした。ところが、会社勤めをするようになってから、息子は夫と私に挨拶をするようになったのです。 家族は驚いてしまいました。 息子と挨拶を交わすようになったら、やがて家族で会話をするようになり、今では家中明るくなりました。 最近では、仏壇に掌を合わせお彼岸にお墓参りを一緒に行く、とまで言い出しました。息子は、『会社で太陽に掌を合わせ、毎日朝の挨拶をしている』と話しておりました。それで自然と気軽に挨拶の言葉が出るようになったのだと思います」と言った。 元社長は、自分が社でしてきたことが社員の家庭に幸せをもたらした、と心底喜んだ。
それから数ヶ月経って今度は会社の社員が元社長宅を訪れた。 元社長は、社員との久しぶりの再会を喜び、家にあげて話を聞いた。 社員は、「今の社長は、社員の顔を見ると注意と小言ばかりで面白くない。 社員たちは、なるべく社長と顔を合わせないようにしている。 社内は、暗い雰囲気に包まれている」と愚痴を言った。 社員が帰ると社長はこれは困ったものだと思い、解決策を考えていた。元社長は、社長と久しぶりに喫茶店で話をすることにした。 元社長は、何気なく「ご家庭で朝は何を召し上がるのですか? 」と話を持ちかけた。 社長は、「女房は寝坊で口数も少なく、起きていてもブスッとしているので、自分で用意して1人で食べて出社しています」と言った。 これを聞いた元社長はこれが原因だと判断した。 話の雰囲気から社長の家は、暗く家族の会話が少ないことがわかった。 元社長は、「次回は、創立者の社長の墓参りをしよう」と持ちかけ約束の日取りを決めて別れた。
墓参りの日が来た。 元社長が墓に花を供えて掌を合わせて創立者に御礼の言葉を言うと、社長は面白くなさそうに義理でお辞儀をした。
仏陀は、言われた。「太陽に掌を合わせることは、命の元、先祖につながっている。 今の人間には理解しづらい。 朝の挨拶は人間を変える」