3月25日午後5時、仏陀は「修行に入る」と言われた。
『日本編』企業シリーズ 2
日本のある都市の出来事である。 女はやっと気に入ったバッグを手に入れ、それを持って街へ出かけた。 化粧室に入った。大勢の人で混んでいた。 バッグを長い洗面台の上に置いた。 丹念に化粧をし直しているうちにバッグを肘で押してしまい、落ちたのに気づかなかった。 化粧が終わり、化粧ポーチを入れようとするとバッグがなかった。 周囲を見回してもなかった。焦った。デパートの係りに事情を説明した。 そして交番に行った。警察官は、訳を聞き調書に書いた。
警察で交通費をもらって帰宅した。 バッグは取られたと信じた。化粧に夢中になった自分を後悔した。バッグには、高価なブランドの財布とバスの乗車券が入っていた。 バッグと財布を同時に失ったショックは、大きかった。 頭は、後悔でいっぱいだった。 やっと手に入れた財布だった。 日常生活に笑いを失っていた。街を歩く人、バスを待つ人、全てに不審感を持ち、暗い毎日を過ごしていた。 諦めきれなかった。
2週間後のことだった。 警察から連絡があった。警察官の前には、なくなったバッグが置かれていた。 警察官から「離れた交番にあなたの届け出と同じようなバックが届けられていました」との説明を受けた。 バッグには、財布がなかった。 警察官は、「届けられたのはバックだけです。中身はありません」と告げた。 調書に署名して帰宅した。
一瞬の喜びは、最悪の事態へと変わった。 財布への未練が、高ぶっていった。バッグを届けてくれた人への感謝の気持ちは、微塵もなかった。バッグ以上に高かった財布がない。油断をした自分を責め、取られたと決めつけてさらに気が沈んだ。女は、バッグを見るたびに腹立たしかった。バッグをしまった。 持つ気がしなくなった。 ついにバッグを処分してしまった。
それから2週間が経ち、警察から電話があった。 財布は、老婆により届けられていた。 老婆は、デパートのトイレで財布が落ちていたので拾って手提げに入れて交番に届けようと思ったが忘れてしまった、という説明を受けた。 財布は、女の手に戻った。 中身は全て元のままだった。財布が出てきたことを喜んだ。
しかし、思い込みで人を恨んだり、暗い日を過ごしたことには、何も反省しなかった。
仏陀は、言われた。「 人間の思い込みである。 自分の思い込みで周囲の状態が見えなくなり、失敗を起こすのが人間の常である。 そして反省しないで同じことを繰り返す」
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