2025年4月7日夕方5時。
仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』企業シリーズ 27
新社長は、役員たちに指示したことの成果が上がっているかを厳しくチェックした。海外市場開発部には契約会社が見つからない場合、担当社員にペナルティーとして減給を課した。契約会社を見つけた社員には、直ちに報酬を渡した。材料は、質にこだわらず安価に仕入れられる商品を探させた。社内では、商品のロスを減らすことを厳しくチェックし、ロスを出した者にはペナルティーとしてロスの商品を買わせた。社員たちは不満の声をあげたが、無視された。
社長は役員の声をほとんど聞かず、自分の方針を進めた。国内の利益を上げるため、菓子部門のほかに高級ファミリーレストランを作り、チェーン展開をすると発表した。レストラン部門は直営店と委託店舗に分け、全国展開する。主要都市郊外に直営店舗を設け、委託店舗については情報網を使って募集する。ファミリーレストランに土産品として自社の高級菓子と子ども用に海外生産の安価な菓子を陳列すると決めた。ファミリーレストランを全国展開するにあたって、国内市場開発部を作った。国内市場開発部には直営店用地として都市郊外の駐車場を広く取った場所を探させた。出店の候補地が見つかると市場調査をし、速やかに直営店を作った。一方、国内市場開発部には、今までの取扱店のほかに全国主要都市に自社の諸製品を扱う店舗があるかを調査させ、見つかると直ちに取引の交渉を指示した。この部署でも市場開発の遅い者に対して減給措置を取った。社内役員たちは、役員の意見を聞かない社長の経営方針に不満だった。海外市場開発部、国内市場開発部とも厳しいペナルティーに不満を言った。新社長の人間性を無視した指示に陰で悪口が囁かれた。社員たちは口数が少なくなり、社内は暗くなった。
一方社長は、ファミリーレストランの新事業に力を注いだ。役員を連れて全国の直営店を視察し、細かいところまでチェックした。直営店の売り上げの報告を見て、収益を細かく調べた。そして「レストランの商品といい、建物、備蓄品に至るまで申し分ないのに売上成績が伸びないのは、注文があってもコックやウエイトレスの士気が足りないからだ。コックは注文商品を出すのが遅いし、ウエイトレスは客に商品の勧め方が足りない」と厳しく叱責した。店内にアンケート用紙を置き、アンケートで指摘された社員については容赦なく減給した。社長のあまりな厳しさに社員は働く意欲を失い、ウェイトレスは注文が来ても素早く行動できず、コックは注文と違った料理を作ってしまうなどの事がたびたび起こるようになった。客は、離れていった。