4月8日朝5時45分。仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』企業シリーズ 28
社長は、売上成績が伸びないのが不満だった。一方社内では社長の厳しい方針に不満が高まっていった。会社の士気は過去のものとなり、社内は険悪な空気で覆われていった。
社員たちは、全国に散らばる支社の労働組合に密かに連絡を取り合った。労働組合でストライキを決行し、社長に不満をぶつけようと決起した。本社の玄関に全国の支社から組合員が集まった。プラカードを持ち頭に鉢巻きをした戦闘態勢の組合員が「ワンマン社長、社員の生活を保障せよ。社員の減給反対!」と一斉に叫んだ。
社長は、突然の社員の造反に驚き焦った。役員たちは、来るべき時が来たと冷静に判断した。役員たちは組合員の訴えを聞き、社長に伝えた。社長は動揺したものの頑なに「長期ストライキをすれば、社員は生活できなくなり、やがて終止せざるを得ない」と考え、交渉の場を作ろうとしなかった。
会社のストライキの行動に目をつけたメディアは、テレビやインターネットを使い、全国にストライキの様子を流した。ストライキは、国民の話題になった。役員たちはストライキが長引けば、会社の売り上げは落ち、大変な危機になることを察し、何度も組合員との交渉を勧めたが、それでも社長は受け入れなかった。
役員たちは社長の強固な態度に困り果て、前社長に相談した。前社長も思案にくれるばかりで答えが出なかった。
元社長に相談し、元社長と創立者の墓参りをした。墓前で2人の元社長は目に涙を浮かべて「申し訳ございません。助けてください」と念じた。
10日経った。組合員の強固な態度に社長は焦った。会社の危機を感じ、組合員と会うことにした。組合員は、「仕事の成果が出ないという理由で減給しないこと、基本給を守ること、生活保障をすること」を訴えた。社長は当初、譲らなかったが、組合員の強固な姿勢とストライキの長期化を恐れ、要求を受け入れた。
社長はこれで一件落着と安堵し、ストライキを解除するように指示した。しかし組合員は、さらに休憩時間の5分間延長を要求した。組合員は、「仕事に集中し疲労がたまるので心身ともに休め、疲労を回復して仕事をしたい」と訴えた。
社長は、就労時間短縮したための損益をいち早く計算した。組合員の意向を受け入れなければストライキを続行する態度に会社の危機を感じ、しぶしぶ要求を受け入れた。社長は、直ちにストライキを解除するよう指示した。
さらに、組合員は有給休暇を3日延長するよう要求した。社長は、これ以上譲歩できない、と強い姿勢で組合員に伝えた。
組合員は、これ以上要求を通せば、今まで成立した要求も却下され、さらにストライキを続ければ生活にも支障が出ると判断し、三番目の要求を取り下げた。