2025年4月12日夕方5時、仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』ある女シリーズ 2
女は犬が死に毎日悲観に暮れて過ごしていた。
一ヶ月たった。女は悲観に暮れる毎日から抜け出そうと思った。もう一度、犬に洋服を着せ乳母車で散歩したいのでまた犬を飼おうと思った。女は心の中では「ペットを失って一ヶ月しか経っていないのに新しい犬を飼うなんて」と後ろめたく思ったが、元の犬をお墓に埋葬し、「ペットより人間の方が大切」と割り切りペットショップへ行った。
乳母車に乗るようなひ弱そうな犬をよく見て選んだ。小さな子犬だったが、ミルクと餌を与え順調に育った。待ちに待った散歩デビューのできる日が来た。前の犬の時に買った洋服を着せ、得意げに犬と散歩した。子犬は、出会う犬すべてに尻尾を振り近づいた。そのたびに明るく挨拶をした。子犬が前方から歩いてくる犬に近寄るのを見て女は、自分の犬の方が可愛いい服を着せている、と満足した。犬は、実に元気だった。前の犬のように歩くのをやめようとしなかった。散歩が終わると女は、汗をかいてつぶやいた。「こんなはずでは、なかった。これでは乳母車に乗せられない」女は、子犬があまりにも元気なのでがっかりした。散歩が終わると犬はお腹を空かし、食べ物を要求した。おやつをあげ、食事もたっぷり食べ、太っていった。女の希望の華奢な弱々しい体型からだんだんかけ離れていった。人懐っこく、よく走る元気な犬だった。女の趣味に全く適わなかった。犬を見ると愛想が良くて可愛いいけれど気分が晴れなかった。女は、犬を友達に譲ろうと思った。犬好きそうな友達へ電話をした。「うちの子は、とても散歩が好きでよく走るのよ。私はついていけないから買わない。高かったけどお安くするわ。ダイエットにいいわよ」など一生懸命勧めたが、友人たちは断った。
友達に断られたので、女はペットショップへ行き、「新しい犬を飼いますから、この犬を引き取ってもらえますでしょうか」と交渉を持ちかけた。ペットショップは、犬は生き物であって愛玩ではありませんと断った。女はがっかりした。女は断られても諦めなかった。どうしても乳母車に乗せられる犬が欲しかった。
意を決し、電車で一駅先にある大きな川のたもとまで散歩に連れて行った。つないでいた金具を外し「さあ遊んでいらっしゃい」と言った。犬は喜んで遠くの方へかけて行った。女は、その隙に逃げるようにして電車に乗り帰宅した。
1週間経った。犬の声が玄関から聞こえてきた。ドアを開くと、痩せて細くなり、尻尾を振り泣いている犬の姿があった。一瞬戸惑ったが、家へ入れて餌と水をやり、謝った。犬を捨てたことに良心が咎めていた。
数日し、女が朝目を覚ますと、体調が良くなかった。体が思うように動かなかった。起き上がれなかった。携帯電話は離れたところに置いてあり、届かなかった。熱が出て苦しかった。犬は、女の普通でない姿を見ていた。女は、犬に携帯電話を取ってと言ったが犬には通じなかった。犬は女のベッドの周りを不安そうに歩いていた。外に人の気配がすると窓辺に行き、吠えた。人が去っても吠え続けた。窓辺で吠え続ける犬の姿に異常を感じた隣の人が女の家のインターホンを鳴らした。女は出なかったが、犬はドアから離れず吠え続けた。
隣人は管理人に連絡し、管理人がドアの鍵を開けてマンションに入った。女の病状を察した管理人と隣人は救急車を呼んだ。女は、病院へ運ばれていった。女は犬に助けられた。