永遠の仏陀からのメッセージ『日本編』ある女シリーズ 3

2025年3月13日朝5時40分。仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』ある女シリーズ 3
女は気がついた。自分が医療器具に囲まれて病院にいることがわかった。熱と胸の痛みで息が苦しかった。医者が病室に来てコロナ感染です、と告げた。治療が長引くと言われた。重体だった。
やっと危機を抜けた時、看護師にどうやって病院に運ばれたのかを聞いた。看護師は、「住居の隣人が犬の吠えるのを聞いて、インターホンを鳴らしても出ないので管理人に連絡し、鍵を開けてもらって入ったら、患者さんが苦しんでいるのが見つかったのだそうですよ」と説明した。女は、犬に助けられたことを知って、犬を粗末にした自分を責めた。涙が頬を伝った。
犬がどうしているか気になったが、何もできなかった。女の病状は解放へ向かって行った。
一ヶ月後退院した。退院すると隣人と管理人に会いに行って礼を言った。隣人も管理人も感染せずに無事だった。世話になった犬のことを聞いた。管理人は、犬は面倒を見きれないのでNPO法人を探し、預けたと言った。早速犬に会いに行った。犬は女を見ると近寄り、体を女にすり寄せて尻尾を振って喜んだ。持ってきた好物の餌をやり、抱きしめて謝った。
NPO法人に礼の言葉を言い、金を払い帰宅した。女は人間に話しかけるように犬に心の底から詫びた。犬は、人間の言葉を理解するような目つきで女の顔を見た。目から涙が溢れ頬を伝った。女は犬を抱きしめ、二度とこんな愚かなことはしないと誓った。
動物を愛玩した自分の愚かさが惨めだった。心から反省した。女は考えていた。「犬に助けられた命、これからは世の中のお役に立つことをしたい」と…。何ができるか試行錯誤した。犬を使ってセラピーをしようと思った。何の資格も持ち合わせていず、できるか不安だった。でも女の犬は、病気をせず、元気で人懐っこく、人の言うことをよく聞くのでぴったりだと思った。
一ヶ月経ち、体力は完全に回復した。女は犬の散歩をした。今までのように犬に洋服を着せず、犬本来の姿だった。気のせいか、犬は着飾った姿で歩くより、何も身につけない姿の方を喜んでいるように感じた。同じ通りを歩いても、前のようにすれ違う犬の洋服を気にしなくなった。すれ違う人にも爽やかに挨拶をした。
女は、かつての決意を実行に移した。獣医へ行き、犬の健康証明書を書いてもらった。女は犬の健康証明書を持って犬と一緒に近くの老人ホームに行き、セラピーを申し込んだ。ホームの受付から事務所に案内された。事務所では女の申し出を聞いて、何も資格がないことを理由に優しく断った。犬の健康診証明書を見せてもダメだった。女は、初めから思うようには事は運ばないと考えていたので、動揺はしなかった。にこやかに事務員の話を聞き、事務員に「これから毎日、犬の散歩がてらに老人ホームによりお年寄りにご挨拶をしていいですか?」と尋ねた。事務員は「談話室があるのでホームの老人たちと挨拶するだけならいいです。長居はいけません」と答えた。
女は毎日散歩の途中に老人ホームに寄り談話室にいる老人たちに明るく挨拶をした。犬も喜んで尻尾を振った。長居はせず、すぐに立ち去った。老人たちは、突然の出来事に驚いたが、犬を連れている女に好意的な目で頭を下げた。
女は老人ホームへ寄るのを散歩コースとし、一ヶ月経った。老人ホームの事務員は「あなたの犬は、安全なことはよくわかりました。ホームの老人たちはあなたと犬に会えるのを楽しみにしてます。よろしかったらボランティアで犬を連れて老人たちと遊ぶ時間を作っていただけますか?」と言った。女は願ってもないことなので快く受諾した。
女は老人ホームが指定した日に犬を連れて訪れた。老人ホームの談話室には、犬セラピーを申し込んだ人たちが集まった。老人たちは、楽しみにして待っていた。犬をさすり、撫でたりした。犬はいろいろな芸をして老人たちを喜ばせた。
人懐こい犬は、優しい顔で尻尾を振り、老人たちの周りを歩いた。老人の顔は明るくなり、笑いが室内に響き渡った。また、重症な老人の周りにも犬が訪れ、優しく尻尾を振ると、反応の少ない老人も顔をほころばせた。
談話室は、幸せな空気でつつまれた。女は幸せだった。自分だけの幸せより、人に喜んでもらえる幸せの方がはるかに大きいことを知った。
仏陀は「真の幸せ、喜びは、他の人を喜ばせることである。己が幸せになることではない」とおっしゃった。