永遠の仏陀からのメッセージ『日本編』ある男A シリーズ 1

2025年4月17日、仏陀修行に入ると言われた。
『日本編』ある男シリーズ 1
ある地方都市に、ごく普通の中年の男が暮らしていた。日曜日の午後、妻とスーパーへ買い物へ行った。妻は野菜コーナーへ行くと、袋に入った野菜を取り丹念に品物を見て「あら高いわね。向こうのスーパーの方が全然安いわ」と独り言を言って商品をカゴに入れた。普段、女はパートの仕事から帰ると、地元のスーパーを三軒はしごして、一円でも安い品を買っていた。日曜は夫と行くので諦めていた。
女が夕飯の材料をかごに入れていると、男は酒のつまみを持ってきてかごの中に入れた。レジへ行くと、日曜日は夫婦連れの買い物が多く、長蛇の列だった。男にとって日曜の買い物は息抜きの時だった。家に帰り、妻が夕飯の支度をしている間、男は、テレビを見ながら買ってきたつまみとビールで晩酌をしていた。2人の子供は父親に飛びついて遊んでくれとせがみ、父親は子供とゲームをして遊んで楽しんだ。男にとって1週間で一番幸せな時だった。妻が作った手料理を囲み、子供たちは、学校での出来事を嬉しそうに父親に報告した。日曜の夕方は妻も子供と父親の会話に入り、笑いが飛び交い賑やかだった。
夕食が終わりに近づくと、妻は「最近は物価が上がって主婦のやりくりは大変」と嘆き、「少しでも給料の良いパートへ移ろうかしら」とつぶやいた。「家賃も高いし生活しづらい」と愚痴をこぼした。「これ以上物価が上がったら、少しでも安いマンションへ引っ越ししないとやっていけない」と嘆いた。妻は続けて「◯◯さんのご主人は一流会社の課長さんに昇進したんですって。お給料も上がるのよね」と言った。夫は半分無視して聞いていた。立て続けに「☓☓さんのご主人は一流大学を卒業して、今、係長さんなんですって」と妻は言った。男の顔色がだんだんと不機嫌になり、「つまりママは、何を言いたいんだよ。よその亭主の自慢話ばかりして」と声を荒立てた。子どもたちは両親の険悪な雰囲気を察し、一人の子は母親の肩に両手を置いて叩き、もう一人の子は父親の肩を両手で叩き、「やめなよ、パパとママ」と仲裁に入った。男は地方の中小企業の部長だった。平均的な大学を卒業し、経理を担当していた。真面目な男だった。
男は、仲間に誘われて飲み会に行くことになった。仲間と会社の近くの居酒屋で仕事の憂さを晴らす最高の時間だった。男が帰宅すると、女は「パパはいいわね。飲み会に行けて。私なんか家庭があり、行けないわよ。それに遊ぶお金もないしね」と嫌み混じりに言った。男は無視した。
女は人には厳しく、自分には優しかった。女は飲み会には行かなくても、通販の雑誌が送られてくると丹念にチェックして、流行りの服を安いからと何枚も買っていた。
そんなある日、男に田舎の母親から父親が倒れて重体なのですぐ帰るようにと電話があった。男は田舎に帰った。父親は脳溢血で倒れて重体だった。父親は、男の顔を見ると「田舎に帰り農家をやってほしい」と弱々しい声で言った。父親は、2日後、病院の手当の甲斐も虚しく亡くなった。父親の葬儀には、地方都市から妻と子供2人が駆けつけて親族が集まり、田舎の習慣に従い無事終わった。男は一人っ子だった。父親は、先祖伝来の田畑を農耕器具の力を借りて耕し、収入を得、子供を大学に出した。食べるには困らなかった。男の生まれ育った集落は、小高い山に囲まれた広い盆地で、田畑に囲まれて古い民家がたくさんあった。
葬儀が終わり、男と母親と妻と3人は、ほっと一息つきながらお茶を飲んでいた。男は、妻に「父親の遺言で田舎に帰り、農家を継いでくれ」と言われた、と話した。