永遠の仏陀からのメッセージ『日本編』ある女シリーズ 1

2025年4月12日朝5時40分。
仏陀修行に入ると言われた。
『日本編』ある女シリーズ 1
女は、気持ちの良い朝を迎えていた。犬と散歩に出かけようと思った。いつもの散歩コースを行くと、前方からも犬を連れた人が来た。女から話しかけ、軽く挨拶をし、犬の名前、犬種を聞き、四方山話をして別れた。気分よく散歩していると、犬が片足を引きずって歩いているのに気づいた。「あら、どうしたの?」と話しかけ歩き続けた。やはり引きずっている。
これは大変と抱っこして家に帰り、早速かかりつけの獣医に行った。診察を待っているあいだ犬にまつわる四方山話をした。診察の番が来た。医者は、丹念に調べて「この犬種からしたら歩きすぎで疲れたのです」と診断した。犬は歩けるのに散歩しすぎとは納得いかない。どこか病気があるのでは、と思っていた。心の中で「藪医者!」と叫んだ。納得がゆかないまま帰宅した。
別の獣医を訪れ、同じことを言われた。2人の獣医から散歩しすぎと言われたが、腑に落ちなかった。散歩を再開した。ある程度まで歩くとやはり足を引きずり出した。やはりこの犬はこれくらいが歩く限度なんだと納得し抱いて帰った。
早速ペットショップへ行き、犬専用の乳母車を買った。犬を散歩に連れて行き、足を引きずり出すと乳母車に乗せた。何日か同じことを繰り返すと、前方から犬を乳母車に乗せた人がやって来るのが見えた。犬にかわいい服を着せていた。自分の犬の方がはるかに負けていると感じ、早速ペットショップに行き、犬の洋服を新調した。
すると犬との散歩より出会う犬の洋服や乳母車に注意が注がれるようになった。女は、自分の犬に他の犬より可愛い洋服、絶対に負けない洋服を着せたかった。犬にレースの洋服とレースの帽子をかぶせ、乳母車にはレースの日傘をつけ、もう誰にも負けないと得意げで散歩した。携帯で写真を撮り、動画を撮り、SNSで発表した。
「いいね」や賛美の言葉に酔いしれた。今や犬との散歩は、散歩そのものが目的でなく、犬のファッションショーになっていった。犬の散歩で可愛い可愛いと褒められ、最高の喜びに浸っていた。そんなある日、犬が急に歩かなくなった。獣医へ連れて行っても原因がわからなかった。ぐったりして食べ物を受けつけなくなり、苦しそうに息をした。
十日経ってあっけなく息を引き取った。女は呆然となり、涙を流して泣いた。泣いても泣いても涙はとめどなく流れた。犬が死んだことは大変なショックだった。
それ以上に犬に洋服を着せる楽しみが無くなったことを嘆いた。心は、二つの生き甲斐を失った悲しみで覆われ、立ち上がれなかった。