2025年4月23日夕方5時15分。仏陀は、修行に入ると言われた。
『日本編』ある男Aシリーズ 13
男は、地方の名士となり成功した。そんなある日、息子から電話があった。「父さん、あちらこちらのホテルでたくさん経験したから、帰って手伝うよ」と言った。気軽に言う息子に男は「家に帰ってもお前の仕事はない!」と怒った。男は、息子の言葉から生活ぶりを理解した。息子は、「親父は、人の話を聞かない」とぼやいて電話を切った。
外人の妻は、語学学校の先生と情報網を使って英語の家庭教師をし、よく働いた。収入は夫より多かった。夫が父親に怒られたと聞き、外人の妻は田舎の両親の顔を見てくると、田舎の実家を訪れた。達者な日本語で挨拶をして「夫が勝手なことを言って申し訳ございません」といきなり謝った。男と妻は、外人の嫁の言葉に「息子はたるんでるけれど、嫁はしっかりしている。日本人の女でもこの言葉は出ない」と腰を抜かすほど驚き、嫁を評価した。嫁は、泊まっているあいだ姑について回り、「お母さん、お母さん」と母親を立て、家のことを手伝った。嫁が帰ると言うと、男と妻はいつでもいらっしゃいと言い、別れを惜しんだ。
男は、経営が安定したので仕事を従業員に任せて、妻を長期の海外旅行に連れて行った。男は、妻に「ここまで来れたのは、お前のおかげだ」と礼を言うと、妻は「あなたがいたからこそ頑張れたのです」と照れながら答えた。年老いても仲の良い夫婦であった。
男と妻が海外旅行から帰国した。家に着くと、息子が働いていた。男は、息子にいきなり「お前の仕事はここにはない。都会へ帰れ!」と怒鳴った。息子は、しぶしぶと故郷を去った。
息子は、ホテルでパートで働いていた。仕事がろくにできないのに海外の学校で学んだことを得意になって言うので、仲間から嫌われた。ついにホテルの客相手の仕事がなくなった。
妻に隠してホテルの清掃のパート職に変わった。妻には、ホテルで仕事をしていると言えるので具合が良いと思った。ホテルの客室掃除の係になった。何事にも大雑把な息子が掃除をすると先輩からきつく叱られた。「やり直しをしな」と言われ再度した。
一ヶ月が経ち、息子はやっと仕事の手順を覚え、先輩に注意されなくはなったが、仕事は相変わらず遅く、仲間の冷たい視線を感じていた。
三ヶ月経った。ようやく人並みに動けるようになった。外人の妻が、夫に会いにホテルにやって来た。夫が、ちょうどホテルの廊下を掃除道具を持って歩いてるところだった。妻は、夫の姿を見て口を開けたまま言葉が出なかった。
仏陀は、言われた。「苦労すればつかむものがある」