臨死体験 その1

わたし自身は、臨死体験はありません。しかし、道場の厳然たる修行に於いて数多の死後の霊魂の体験を持っています。厳然たるとは、仏教修行として、そしてそれを行う科学的姿勢として厳格に行い続けたつもりです。その立場から今回は、「臨死体験」について少々述べさせていただきたいと思います。

臨死体験は、古代から報告されて来ました。しかし、かつては死んで帰って来たといった体験を語る人は稀で、これまで臨床の場では、もっぱら死が迫り心身が混乱した人の戯言か幻想であるとして切り捨てられてきたのです。
しかし、近年救急救命医療が発達したことにより、仮死状態から蘇生し、意識を取り戻す例が珍しくなくなり、それと共に臨死体験を公言する人が、急増しました。なおかつその内容に共通性がみられることが少なくなく、「死後に現実の世界が観察できた」とする証言と状況証拠が一致する報告例も多いことから、臨死体験は、人の生と死の境界で発生する現象と認める科学者や医師が特に欧米で増えている、といわれます。
少なくとも現代医学が常識としてきた死の定義を見直し、さらに死後の世界の有無についても真摯に検証すべきではないか、という動きが出てきました。
今やその例は、枚挙にいとまがありませんが、特に世界の医師に臨死体験の現実性を認めさせたのは、1991年アリゾナの病院の手術室で起きた、バム・レイノルズさんの臨死体験です。人工的に心肺停止状態をつくり脳も機能停止しているということが確かめられた上での臨死体験であったために信憑性が高いものと評価されました。オランダの心臓外科医で臨死体験研究者のピム・ヴァン・ロメル博士が、この例に触発され、独自に調べた心肺停止状態から蘇生された患者344人を対象にした臨死体験の臨床研究としての学術論文が、2001年世界的に権威ある医学誌『ランセット』に掲載されました。
殊に注目すべきは、臨死体験をされた方に心境の変化が起こっていることです。例えば、
① 物欲が、薄れた。(臨死体験者の約半数)
② 名誉や社会的地位への関心も薄れる。
③ 大切なものは、愛や思いやり、そして人間関係であると覚る。
④ 死ぬのが怖くなくなる。
人々は、臨死体験というとその不思議現象に目が奪われがちです。しかし、その本質は、まさにここにあると思います。
参考 エリコ・ロウ著「死んだ後には続きがあるのか~臨死体験と意識の科学の最前線~」(扶桑社)