3月22日午前5時45分、仏陀からの体験的説法
※以下は、単に仏陀の言葉による説法やストーリ一ではなく、唱題修行を通して実際に仏陀に出会い、まるで人生体験のようにリアルに体験された内容を文字として記述したものです。
「王の物語編 23」
かつての豊穣な農地は、今や荒涼とした土に変わっていた。 毎年続く猛暑と干ばつで大地は痩せ細っていた。 穴の開いた衣を身に纏い肩まで届く髪と無精髭を生やしながら枯草で覆われた農地に立つ、かつての王に晩秋の冷たい風が容赦なく吹き付けた。「 これからどうやって生き延びようか?」と考えに耽った。領民はわずかな食料で命をつないでいた。王もその1人だった。 ひもじさから出る貪欲で鋭い目つきにかっての王の威厳はなかった。 そんな時、農道を歩いてくる旅人があった。旅人は、王を見つめた。かつての王だと分かったが、その変わり果てた姿に驚きを隠せなかった。「王様ですか?どうなさいましたか?」 と尋ねた。 かつての王は、実情を話した。すると旅人は、農地の乾いた土を手に取って触わった。そして「農地は痩せ細っています。 よく耕し、肥料をやってくださいますか?」と言った。
王は、自信を以て言う旅人の言葉に何も疑問を持たず、毎日毎日乾ききった農地を耕やした。
数ヶ月経った。王が耕した農地に立っていると、あの旅人がやってきた。耕された農地を見て「よく耕されましたね。 この芋を春になったら植えてください」と言って芋を置いて去っていった。春が訪れ、王は言われるがままに乾いた農地に芋を植えた。 しかし、雨が降らなかった。 王は気が気でなかった。 旅人の言われるままに植えた芋が枯れてしまうと心配して、毎日空を見上げは農地を見て歩いた。一向に雨の降る気配はなかった。 異変が起きた。温かい春の風が急に冷たい風に変わって空は、黒い雲に覆われた。大きな雹が降ってきたて畑一面を叩きつけた。やがて、雹は去っていった。 雹が溶けた農地は、水分をたっぷり含み生き返っていた。 春風と共に芋の芽が出た。その後少ない降雨量にも関わらず、順調に芋は成長し収穫できた。 旅人がやってきた。 収穫した芋を見て、「私の国では、猛暑と雨が少なくても良く育つ芋を開発しました。その後どうなさったか、畑を見に来ました。 芋がたくさん収穫出来てほっとしました」と言った。かつての王は、心から礼を言った。 王は、収穫した芋を領民に分けた。 領民は、翌年この芋を農地に植えた。芋は、豊かに実った。 領民は、丁重に腰を深ぶかと下ろして、かっての王に礼を言った。 領民の頬は、興奮により紅潮していた。 今まで王はこのように領民から心を込めて礼を言われたことがなかった。王の波乱万丈の人生の中ではじめて、魂から湧き出る涙が頬を伝った。涙は、とめどもなく流れた。全てを失い、領民と同じ立場になり、飢えの苦しみの中で見つけた真実の姿だった。