永遠の仏陀からのメッセージ 『日本編』企業シリーズ 10

3月29日夕方5時。仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 10
男は、借金のことで騙されたのは人生の教訓と捉えた。気持ちが前向きになった。 会社では今までと同じようによく気配りをし、誠実に働いた。
そんな或る日のこと、帰宅すると妻が「お父さん。 最近体が、だるくて調子が悪いの…」と訴えた。男は、さほど心配に思わなかったが、「念のために医者に診てもらったら…」と言った。翌日妻は、町医者に行って検査をした。 すると内臓に腫瘍の疑いがあると診断され、大きな病院を紹介された。妻は、涙を浮かべながら夫に「腫瘍の疑いと言われたけれど、癌よね」と告げた。
男は、ショックのあまり体が硬直し、頭の中が真っ白になった。 ただ、「大丈夫だよ。大丈夫だよ」と慰めるしかなかった。男は、会社を休んで妻に付き添い、紹介状を持って大きな病院へ行った。 再検査をした。 医師に「末期の癌です。手術すれば、余命は伸びます」と伝えられた。
男と妻は、無言で帰宅した。 帰宅した途端、妻は泣き崩れてしまった。男は、慰める言葉が出ず、ただ、妻の背中を撫でるだけだった。 男の胸は、張り裂けそうだった。癌は、妻の死へと向かう宣告だった。命が消える恐ろしさが、妻と男を襲い、二人は暗い雲に覆われた。 お互いに声を出して泣いた。男は、妻に出来る限りのことをする、と誓った。
会社では、苦しみに負けず暗い顔をせずよく働いた。 これまで同様部下をいたわり、取引先にも誠実に対応した。
手術のために高額な金が掛かった。 保険で払ったとしても補えなかった。 過去の多額の返済で、男は大して預金がなかった。 男は、社長に正直に実情を話した。社長は、男の誠実な働きぶりを評価し、金を貸した。 借用書を求めなかった。男は、かつて自分が失敗した苦い経験があったので、たじろいだ。社長の部下を信用する態度にどんなことがあっても金を返すことを誓った。
仏陀は、言われた。「人間は、誠実に生きれば必ず助けられる。 国も同じである。損得勘定で国策をしていれば、いざ低迷した時に誰も助けてはくれない」

永遠の仏陀からのメッセージ 『日本編』企業シリーズ 9

3月29日朝5時45分、仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 9
男は、社長の好意に感謝した。 社宅での生活が始まった。 家族には、今までの明るい団らんはなくなっていた。
男は、帰宅すると一人でテレビを見ていた。しかし何を見ても上の空で、失った金のことが頭から離れなかった。 会社へ出勤しても今までの働きができなかった。 暗い顔つきだった。起きてしまった事態と後悔が、頭に常に浮かび消せなかった。 会社の帰りに飲み屋にいった。ほろ酔い加減でいると、隣の客の噂話が聞こえてきた。「うちの近くの町工場でひどいやつがいて金に困り、闇金融に手を出した挙げ句返せなくなって一家で夜逃げしたんだとさ…」
男は隣の客に事の成り行きを詳しく聞いた。 間違いなく男の友人だった。 どこへ逃げたか聞いた。「噂だと故郷へ逃げたそうだ」と言った。 さっそく男は、会社から有給休暇を取り、逃げた友人の故郷の実家へと向かった。 友人の実家は、過疎地だった。 山と畑に囲まれた中に古い家があった。玄関に出てきた老夫婦は、友人の親だった。訪ねてきた訳を話すと老夫婦は、息子の失態を地べたに這いつくばって謝った。父親は、言った。「息子は、金の無心に来ましたが、『私らは、食べてゆくのがやっとで金はないよ』と言うと、プイッと出て行ってしまいました」
「申し訳ございません。私どもには、どうすることも出来ません」と、老夫婦は、涙を流して謝った。
男は、老夫婦に別れを告げ、失意のままに家に帰った。会社に出勤しても今までのように働けなかった。沈んだ顔をして歩いているとすれ違う社員が、皆自分の噂話をしているような気がして滅入っていた。
ある日、見るに見かねた妻が言った。「このままだと家族は崩壊してしまう。 どこか近場の温泉へでも行き、神社にお参りをして厄払いしてもらいましょう。 いつまでも失った物にこだわっていたら皆病気になってしまう」
男も同感だった。 会社に有給休暇を申請し、温泉へ行くことにした。宿の露天風呂に入っていると隣の垣根越しから鼻歌が聞こえてきた。 何と金を騙した友人の声だった。 急いで着替えて隣の風呂に行って、金を取った男に迫った。呑気なもので「無いもの出せない。どうしても、と言うなら首を切って持っていけ!」と悪びれもせず言い放った。詰め寄って迫ったが、耳をかさず「無いものは、無い!」と繰り返した。
この友人に学生時代の面影は、微塵も見られなかった。あまりに変わり果てたふてぶてしい姿に、男は安易に金を貸した自分の愚かさを心から後悔し反省した。 部屋に戻り妻に話した。家族で神社に参拝して帰路に着いた。 男は、神様からの厄払いではなく、自分自身の心で厄を払った。立ち上がれる力が、体を包んだ。

永遠の仏陀からのメッセージ 『日本編』企業シリーズ 8

3月28日夕方5時。 仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 8
男は、賞与を2倍もらったことを喜んでいた。 そんな時、昔の友人がやってきた。「会社が赤字を出したため銀行などから借りた金が返済できない。 お金を貸してほしい」と言った。 友人の男とは、学生時代からの長い付き合いだった。 男は、自ら倒産した苦しさを体験していたので金の工面の大変さやその切羽詰まるような苦しい状況は、よくわかっていた。友人は高額な借金を申し込んできたが、それは断った。男は、ボーナスの半分ならと思い貸した。学生時代の仲の良い友人に対して借用書の要求は言い出せなかった。
帰宅した男は、家族に今回賞与が2倍になったことは隠してこれまでと同額を渡した。 男は、会社ではいつもと同じように働いていた。
会社で仕事をしていた時に携帯の電話が鳴った。友人からだった。借金を返してくれるのだろうと思った。 友人に会った。心労と疲労が顔に表れ見すぼらしい姿だった。友人は「この間の金は、借金の返済に当てた。 本当に会社は危ない。 倒産する」と言い涙を流した。「少しでも良いから工面してほしい」と懇願してきた。 男は同情したが、手持ちの金は大してなかった。 後日、ひそかに貯めていた金の一部を家族に内緒で渡した。借用書を書いてくれとは、また言えなかった。
それから1ヶ月後友人から連絡があったが、会いたくなかった。 男が会社の門を出た時、門の影からすっと友人が現れ声をかけてきた。 顔には、生気がなかった。 「金を全額返す」と、か細い声で言った。 男は、ホッとして会社の近くの喫茶店に入った。 友人は、金の入った封筒をテーブルの上に置いた。 借りた時の弱々しい困惑した姿はなかった。が、礼を言わなかった。 そして、「会社は不渡りを出さずに済み、危機を脱した。ただ会社を立て直すための資金がいる。 絶対に迷惑はかけないから…」と保証人の書類を出し署名と捺印を依頼してきた。 男は、「貸した金は戻ってきた。若い時からの友人だし、金額は大したことではない。 友を裏切るわけにはいかない」と署名捺印した。後日、男は密かに貯めておいた金を全額友人に送金した。
数ヶ月経った或る日曜日、家族で団欒をしていたところに玄関のブザーがなった。玄関には、荒々しい男が2人立っていた。書類を見せながら「 保証人となっている。金を返してもらいたい!」と言った。闇金融業者だった。 借りた金は、返金できず利息がつき、かなりの高額になっていた。 男は、友人に電話をしたが出なかった。闇金融業者は、帰っていった。
男は、友人の家に行った。 人が住んでいる気配がなかった。「夜逃げしたらしい」と近所の人から聞いた。友人との連絡は途絶えた。男の家族は、深刻な空気に包まれていった。 男は、妻には金を貸したことなど何も伝えていなかった。 金融業者は、毎日会社の門で男の出てくるのを待ち伏せ返金を迫った。 社内では、男の噂話が聞こえるようになっていた。 借金は、返済期間が伸びて雪だるまのように増えていた。保証人として借金と利子を返済するには、家を売るしかなかった。 苦労して手に入れた家を…、手放し…返済した。
男は、家族と共に小さな賃貸のマンションへと移り住んだ。 家族は、父親の落ち度を責めた。 家庭は、暗くなっていった。 男は、今までの明るい様子を見せなくなった。 男の様子を心配した会社の社長が訳を聞いた。男の話を聞いた社長は、男の今までの実績を評価し、社宅へ移るように勧めた。
仏陀は、言われた。「人に金を貸す時は、その金をあげたものとして渡さなければならない。 親しい仲でも安易に金を貸したり、保証人になってはいけない」

永遠の仏陀からのメッセージ 『日本編』企業シリーズ 7

3月28日5時40分。仏陀は、修行に入る、と言われた。
『日本編』企業シリーズ 7
男は、家族に今までの態度を謝った。会社の倒産の整理をして帰宅すると、妻は冷たいビールを差し出し、子供たちは父親を囲み1日の出来事を話すようになり、家庭は明るくなっていった。
倒産した会社の整理が終わった。 男は家族を養うための仕事を探していた。 パートに出ていた妻が帰宅した。 「お父さん、うちの会社でアルバイトで警備員を募集しているのよ」と告げた。 男は、かつてクッキー職人から中堅の会社を起こしたプライドを持っていた。 倒産させたとしても、プライドは消えていなかった。しかし、現実は仕事が見つからなかった。警備員になる覚悟をした。 妻の勤める会社は、地元では大手に入る会社だった。 妻の会社に採用された男は、仕事が丁寧だった。 会社の隅々をよく点検し、すれ違う人には優しい声で挨拶をした。良く気配りして働いた。 上司は、働きぶりを見ていた。推薦されて正社員となった。 正社員となってからも変わらず良く働いた。 他の警備員らにも評判が良かった。 1年経った。社長から警備員の長への辞令を受けた。
入社してまだ浅いが、誰もが認める働きぶりだった。部下となった仲間にも決して偉ぶらず、仕事を指示し良く働いた。また1年経った。仕事ぶりを見ていた社長から総務部への移動を告げられた。 総務部では、訪れる客への適切な応対と気配りが評判となった。 よく働いた。かつての会社で身についた姿だった。早く出社し、自ら先頭に立ち掃除をした。威張らなかった。男の働きぶりを見ていた取引先の会社の社長から声をかけられた。「我が社の営業部の部長として来てもらいたい」との打診であった。この会社は、今居る会社より規模は小さいが、製菓会社だった。 給料も良かった。過去の経験が生かせると判断し、転職した。男の過去に培かった経験が、生かされた。取引先拡大に向けて自ら陣頭に立ち働いた。 熱心で誠実な男の働きぶりで取り引き先を増やした。長となっても決して部下に威張らなかった。部下をかばった。部下は、部長の指示を的確に受け良く働いた。 会社の営業成績は上がった。男の実績が、認められた。夏の賞与は、倍になっていた。
仏陀は、言われた。「過去の失敗や辛い経験は、全て人生の宝である。 心がけ次第で運命は変わる。国についても同じである」

永遠の仏陀からのメッセージ 『日本編』企業シリーズ 6

2025年3月27日夕方5時、仏陀は「修行に入る」と言われた。
『日本編』企業シリーズ 6
会社は得意先を増やし、売上は向上した。 社長は社員のボーナスを増やし、社員らは喜んだ。 男の社員は、ゴルフをし飲みに行き、女の社員はショッピングをし旅行をし、今までできなかったことをして楽しんだ。 社長は、社員のボーナスを増やしても自分には増やさなかった。 過去の苦い経験が身に染みて自分を戒しめ地味に暮らしていた。
だがその反面、家庭では頑固だった。 妻には何事も命令口調で、全て服従させた。 子供にも命令のみだった。 家族と話し合うことをしなかった。 社長の男は、一生懸命働いて家族を何不自由なく暮らさせてやっている。 服従するのは当たり前だと思っていた。 家庭は、暗かった。
ある日社長へ苦情が届いた。 社員が行きつけの飲み屋からだった。 社員が飲んで客と喧嘩をし、以来客が店に寄り付かなくなってしまったとのことだった。社員を呼んで訳を聞くと、1人で飲んでいると絡んでくる客がいて口論となり客に怒鳴り返してしまったとのことだった。ふだん真面目でよく働く社員にはおよそ考えられない行動に社長は驚きつつも注意をした。 またある日のことだった。取引先の店から、「お宅の社員がぞんざいな口の利き方で接してくる」との注意を受けた。 社長は、得意先に謝った。 この社員も社長の前では、決して見せたことのない態度だった。 社長は、社員に厳重に注意した。 また、別の取引先から「納品したクッキーが破損している」との苦情を受けた。 社長は、朝礼でそれぞれの注意事項として社員らに強く言い渡した。 社内は、以前のような活気がなくなっていった。
我慢して頑張り続け、漸く成果を出すことが出来、ボーナスも上がったところで気が緩み、大きな気持ちになっていた。仕事への緊張感も薄らいでいたのだ。社内でかつてなかった陰口も聞かれるようになった。
変わった社内の雰囲気に社長は、まるで社員を監視するように厳しい目で見るようになっていった。 社内に明るさは、なくなっていった。 会社から退職者が出始めた。 得意先からの注文が減っていった。社長が、会社員に強く指示すればするほど社員は、退職届けを出して辞めていった。 得意先からの注文は減り、結果として社員への給料は減額となった。 会社は赤字を出し、ついに倒産した。
社長は、倒産した会社の整理に明け暮れていた。心痛と疲労で体は、痩せ衰えた。重い足取りで帰宅し、無言で過ごす日々を送っていた。 ある日のことだった。 夕方帰宅し、無言のままテレビを見ていた。 家族を寄せつけない姿だった。 男は、苦しかった。 寂しかった。 恐ろしかった。 と、その時妻が、冷えたビールをテーブルに置き「これを飲んでください」と優しい声で言った。男の心には、衝撃が走った。 かつて妻にこのような言葉をかけたことなどなかった。 男にとって妻への労いの言葉、優しい言葉をかけるなど皆無の世界だった。 男の目から涙が滲んだ。 子どもも出てきて「肩を揉んであげるよ」と揉み始めた。 男の頬から涙が伝わった。緊張で固まっていた男は、肩を丸めて泣いた。 今まで男の傲慢な姿に家族は近寄らなかった。
社長でなくなり、一人の人間となった時、世間の風当たりは冷めたかった。これまで仕事で親切だった人たちにも素っ気なくされた。 心は、孤独の城に閉じ込められていた。 家族の優しさに触れて初めて自分のしてきたことの間違いに気づいた。 家族を大切にしなかったことを謝った。
仏陀は言われた。「長たる者は、家族を大切にしなくてはいけない。 全ての基本であり、土台である。社員の取った不始末の姿は、社長の家族への態度の現れ(反映)である。国も同じである。 国の長たる者は、支えている国民を大切にせねばならい」