2025年3月27日夕方5時、仏陀は「修行に入る」と言われた。
『日本編』企業シリーズ 6
会社は得意先を増やし、売上は向上した。 社長は社員のボーナスを増やし、社員らは喜んだ。 男の社員は、ゴルフをし飲みに行き、女の社員はショッピングをし旅行をし、今までできなかったことをして楽しんだ。 社長は、社員のボーナスを増やしても自分には増やさなかった。 過去の苦い経験が身に染みて自分を戒しめ地味に暮らしていた。
だがその反面、家庭では頑固だった。 妻には何事も命令口調で、全て服従させた。 子供にも命令のみだった。 家族と話し合うことをしなかった。 社長の男は、一生懸命働いて家族を何不自由なく暮らさせてやっている。 服従するのは当たり前だと思っていた。 家庭は、暗かった。
ある日社長へ苦情が届いた。 社員が行きつけの飲み屋からだった。 社員が飲んで客と喧嘩をし、以来客が店に寄り付かなくなってしまったとのことだった。社員を呼んで訳を聞くと、1人で飲んでいると絡んでくる客がいて口論となり客に怒鳴り返してしまったとのことだった。ふだん真面目でよく働く社員にはおよそ考えられない行動に社長は驚きつつも注意をした。 またある日のことだった。取引先の店から、「お宅の社員がぞんざいな口の利き方で接してくる」との注意を受けた。 社長は、得意先に謝った。 この社員も社長の前では、決して見せたことのない態度だった。 社長は、社員に厳重に注意した。 また、別の取引先から「納品したクッキーが破損している」との苦情を受けた。 社長は、朝礼でそれぞれの注意事項として社員らに強く言い渡した。 社内は、以前のような活気がなくなっていった。
我慢して頑張り続け、漸く成果を出すことが出来、ボーナスも上がったところで気が緩み、大きな気持ちになっていた。仕事への緊張感も薄らいでいたのだ。社内でかつてなかった陰口も聞かれるようになった。
変わった社内の雰囲気に社長は、まるで社員を監視するように厳しい目で見るようになっていった。 社内に明るさは、なくなっていった。 会社から退職者が出始めた。 得意先からの注文が減っていった。社長が、会社員に強く指示すればするほど社員は、退職届けを出して辞めていった。 得意先からの注文は減り、結果として社員への給料は減額となった。 会社は赤字を出し、ついに倒産した。
社長は、倒産した会社の整理に明け暮れていた。心痛と疲労で体は、痩せ衰えた。重い足取りで帰宅し、無言で過ごす日々を送っていた。 ある日のことだった。 夕方帰宅し、無言のままテレビを見ていた。 家族を寄せつけない姿だった。 男は、苦しかった。 寂しかった。 恐ろしかった。 と、その時妻が、冷えたビールをテーブルに置き「これを飲んでください」と優しい声で言った。男の心には、衝撃が走った。 かつて妻にこのような言葉をかけたことなどなかった。 男にとって妻への労いの言葉、優しい言葉をかけるなど皆無の世界だった。 男の目から涙が滲んだ。 子どもも出てきて「肩を揉んであげるよ」と揉み始めた。 男の頬から涙が伝わった。緊張で固まっていた男は、肩を丸めて泣いた。 今まで男の傲慢な姿に家族は近寄らなかった。
社長でなくなり、一人の人間となった時、世間の風当たりは冷めたかった。これまで仕事で親切だった人たちにも素っ気なくされた。 心は、孤独の城に閉じ込められていた。 家族の優しさに触れて初めて自分のしてきたことの間違いに気づいた。 家族を大切にしなかったことを謝った。
仏陀は言われた。「長たる者は、家族を大切にしなくてはいけない。 全ての基本であり、土台である。社員の取った不始末の姿は、社長の家族への態度の現れ(反映)である。国も同じである。 国の長たる者は、支えている国民を大切にせねばならい」